次期FRB議長、誰であっても新たな雇用目標と利上げの折り合い必要
Craig Torres-
金融政策の戦略を昨年見直した米金融当局、インフレ高進想定せずか
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米金融当局は引き締め気味の金融政策への早期転換迫られる可能性も
来年2月の時点で米連邦準備制度理事会(FRB)を率いているのが現FRB議長のパウエル氏、FRB理事のブレイナード氏のいずれであろうと、金融当局は自らが招いた窮地に立たされている恐れがある。
前年同月比で1990年以来の大幅上昇となった10月の米消費者物価指数(CPI)や、8年ぶりの高水準となった家計の予想インフレ率を受けて、インフレ率が今後何カ月かで鈍化すると想定していた金融当局者の自信も揺らいでいる。
こうした状況を背景に、債券購入のテーパリング(段階的縮小)のペース加速のシグナルを発したり、経済予測を更新して従来予想よりも積極的な利上げサイクルを示唆したりすることなどで、金融当局は12月にも引き締め気味の金融政策への早期転換を迫られる可能性がある。
しかし、2022年の課題は事実上のゼロ金利政策を解除するかどうか、そしてゼロ近辺から利上げするとすればいつになるかという問題だろう。ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェースのエコノミストは23年までの米金利据え置き見通しを撤回し、市場は22年7月にも利上げが開始される可能性を既に織り込んでいる。
金融当局の政策決定を複雑にし、コミュニケーション面の難題を突き付けているのは、当局が20年に打ち出した金融政策の戦略見直しだ。パウエル議長とブレイナード理事は他の当局者と共に、最大限の雇用が達成されるまで金利を超低水準に据え置くのが「適切」との見解で一致し、最大限の雇用を「広範囲で包摂的な目標」と再定義した。
金融当局者は当時、現在進行しているようなインフレ高進を想定しておらず、このため今では困難な状況に陥り、インフレ抑制で後手に回っているとの批判を浴びている。
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広範囲な雇用拡大を目指すとのコミットメントから後退すれば、金融当局が何を達成しようとしているのか疑問を生じさせるほか、物価安定を優先してきた当局の姿勢に批判的な民主党進歩派からの反発を招くだろう。一方、高インフレ持続を容認すれば、将来的に一段と大幅な利上げを意味することとなり、失業率を5%を下回る水準に押し下げることで得られた雇用面の成果を台無しにしかねない。
グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「金融当局にとって現行の難題は、広範囲で包摂的な完全雇用を達成する前に、インフレおよびそれが定着するリスクを抑制しなければならないことだろう」と指摘。昨年の政策枠組みの見直しは「緩慢な経済成長を念頭に置いたもので、急旋回した経済情勢は想定外だった」と指摘した。
当面の関心は来年2月に誰がFRB議長の座にあるかだ。バイデン大統領は25日の感謝祭の前にパウエル議長の続投か、ブレイナード氏を次期議長に指名するか決断を下す見通し。
パウエル、ブレイナード両氏とも金融政策の新戦略の策定に携わっており、どちらが次期議長に就任するにしても政策運営とどう折り合いを付けるか責任を負うことになる。
原題:
Powell or Brainard Will Struggle to Align Hikes With Hiring Goal(抜粋)