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GX移行債は発行金利上昇の可能性、流動性が課題-土居慶大教授

  • 慎重だった財務省、財界が嫌がる炭素税とバーターか
  • さまざまな名目で国債増発できると「政治家が悪乗り」の恐れも

財政制度等審議会のメンバーで財政政策が専門の土居丈朗慶応義塾大学教授は、岸田内閣が発行を検討している「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」について、市場流動性の低さから国の資金調達コストが上昇する可能性があるほか、財政規律低下につながるリスクがあるとの見方を示した。

  環境に配慮した事業の資金調達のため発行されるグリーン国債は欧州中心に発行が拡大しており、大和証券によると2021年の欧州での発行額は約487億ユーロ(約6.6兆円)と前年から4倍近くに達した。利回りは通常の国債より低く(価格は高く)、先行するドイツなどでは2~3ベーシスポイント(bp)程度の「グリーニアム(グリーンとプレミアムを合わせた造語)」が発生している。

Keio University Professor Takero Doi
土居丈朗・慶応義塾大学教授
Source: Takero Doi

  土居氏は先月26日のインタビューで、計画されている年間2兆円の発行では市場規規が小さく売買がしにくい流動性リスクがあるため、これにより金利が上昇すればグリーニアムによる金利低下分を上回る可能性があると指摘。「他の国債と別に発行することによる資金調達上のメリットは意外となく、どこまでグリーン国債として確立できるか、ふたを開けてみないと分からない」と語った。

  岸田文雄首相は19日に官邸で開いたクリーンエネルギー戦略に関する有識者懇談会で、GX経済移行債の発行を検討すると表明した。政府関係者らによると、経済産業省が主に所管するエネルギー対策特別会計(エネ特)を活用する案が浮上しているという。復興債と同様、一般会計ではなく特会を使って国債を発行する仕組みだ。

  神田真人財務官は昨年末のインタビューで、グリーン国債発行は「拙速な対応に陥らないような慎重な検討が必要」と述べるなど、財務省は否定的とみられていた。土居氏は「経済界が嫌っている炭素税という返済原資を手当てすることとセットなら、財務省ものめるのかもしれない。GX債の発行は経済界も望んでおり、炭素税とのバーターではないか」と話す。

色付き国債

  もっともエネ特での発行は問題が多いと土居氏は言う。政府は25年度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)黒字化を目標としているが、同特会での発行はPB収支に含まれるため財政健全化目標に抵触する。より望ましいのは財投債での発行という。財政投融資特別会計はPB収支に入らず黒字化目標の障害にならない。

  土居氏は「国債に色を付けた途端、さまざまな名目で国債を増発できるだろうと政治家が悪乗りしてくる恐れもある」と指摘。財投は融資なので返さなければならず、償還確実性を精査するため規律が働くが、エネ特では補助金を出すことも可能で運用がルーズになる危険性があるとした。

  土居氏は「経産省や環境省関連の事業だけでは年間2兆円もニーズがないかもしれないが、財投であれば他省庁所管の事業でグリーンと名が付くに値する案件があるので、パッケージ化してグリーン国債として規模を拡大して発行することも可能だ」としている。

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