ユーロが1ドル下回る、欧州景気後退懸念で約20年ぶり等価割れ
小宮弘子、Greg Ritchie-
ユーロは一時0.4%安の0.9998ドルまで下落、米CPIが予想上回る
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ECB、為替がインフレに及ぼす影響には注意している-報道官

The tower of the ECB main building is pictured by night showing the illuminated euro currency symbol in Frankfurt.
Photographer: DANIEL ROLAND/AFP13日の外国為替市場では、ユーロが約20年ぶりに等価(パリティー)の1ユーロ=1ドルを割り込んだ。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給不安や記録的なインフレで、ユーロ圏が景気後退に陥るリスクが高まっている。一方、米国では急速な金融引き締めが続く見通しで、金利差拡大を意識したユーロ売り・ドル買いが進んでいる。
ユーロは一時0.4%安の0.9998ドルまで下落。パリティー割れは2002年12月以来。6月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったほか、中国のロックダウン(都市封鎖)再導入懸念などからアジア株が下落し、リスク回避のドル買いが強いこともユーロ・ドルを下押ししている。
ブルームバーグの調査結果によれば、エコノミストが織り込むユーロ圏のリセッション確率は45%。ロシアからのエネルギー供給が途絶えるリスクが高まる中、ドイツでは景気に対する信頼感を示す期待指数が大幅悪化し、欧州債務危機にあった11年以来の低水準となった。
ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストは、欧州の景気減速と米国の7月の75ベーシスポイント(bp)の利上げが視野に入っている状況で、ファンダメンタルズはユーロ・ドルの下方向を示していると指摘。「パリティーを割れればいったんは達成感で買い戻しが入ってもおかしくないが、すぐに売り優勢に戻っていくのではないか」と話した。

ユーロの下落について、欧州中央銀行(ECB)政策担当者の一部はすでに懸念を示唆している。13日の朝方にはビルロワドガロー仏中銀総裁が、ユーロ安は消費者物価に影響するためECBは相場の動きを注視していると語った。
ECB報道官は同日、「ECBは特定の相場水準を目標にしていない」と説明しつつ、「物価安定の責務に沿って、インフレに為替が及ぼす影響には常に注意している」と述べた。
ユーロは1999年に導入されて以来、多くの変動を経てきたが、初期には0.85ドルを下回る水準に低迷し、存続が疑問視されたこともあった。結局、ECBが他の主要7カ国(G7)中銀と予想外の協調介入に踏み切り、ユーロを押し上げた。
クリス・ターナー氏らINGグループのストラテジストは、「ECBが相場の動きに懸念を強めるのは疑いない。とりわけ『ユーロ圏資産の売り』という心理に発展するようなら、なおさらだ」と指摘。「ただ、リセッション(景気後退)入りが迫っているリスクもあり、ユーロは景気が好循環に入ると買われる通貨だ。大幅な利上げを示唆してユーロを防衛するECBの能力は、限られているかもしれない」と述べた。
原題:Euro Drops to Dollar Parity for First Time in Two Decades (2)(抜粋)