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新興国市場の「人為的に低い」ESGスコアを超過リターンの源泉に

  • 「投資家が見落としている多くのESG銘柄がある」と米投資会社
  • 新興国市場のデータ不足は「超過リターン獲得の機会」-GSAM
Emerging markets outperform tech as investors seek ESG opportunities

新興国市場における信頼できるESG(環境・社会・企業統治)データの欠如が、世界的な金融大手の一部に恩恵をもたらしている。

  この1年、新興国市場へのESGエクスポージャーを積み上げてきた投資会社の一角である米フェデレーテッド・ハーミーズは、新興国市場のESGスコアが「人為的に低い」ことで独自調査を行う意欲のある投資家に好機が生まれていると分析する。

  同社のポートフォリオマネジャー、マーティン・トッド氏は、「主要な」ESG格付け会社はしばしば、新興国市場の株式に低めの評価を付与すると指摘。先進国市場に上場している銘柄と比べて情報開示が少ないためだと説明する。

  それが「実際に興味深いバリュエーションの好機」を生み出していると同氏はインタビューで述べ、「新興国市場のバリュエーションは全般に真に魅力的な水準に戻っており、投資家が見落としている多くのESG銘柄がある」とした。

  フェデレーテッドは新興国市場の銀行に投資しており、特に口座に通常アクセスできない弱者を取り込もうとしている銀行を選好している。トッド氏は「経済が発展し、銀行がより多くのテクノロジーを開発・使用するにつれ、金融エコシステムに参加する人がますます増える」として、今はきっかけをつかむことが重要との見方を示した。

Emerging markets outperform tech as investors seek ESG opportunities
 
 

先進国の同業他社よりスコアが低い傾向

  ESG投資に関しては長い間、運用会社が投資判断を行う上で必要な情報を入手できないという問題が指摘されてきた。これは新興国市場に最もよく当てはまる。同市場では欧州や米国に比べ、ESGに関する規制が進んでおらず、ESGスコアも十分確立されていないからだ。

  新興国市場の企業のESGスコアが「人為的に低い」のは、ESG関連の「特定の懸念材料によるものではなく、情報開示の不足によるものだ」とトッド氏は指摘。「全ての詳細がESGスコアに反映されているわけではない」と話した。

  世界の大手ESG格付け提供会社の1社であるMSCIにおいては、新興国市場の企業は一般的に「グローバルの比較基準によると、先進国市場の同業他社よりもESGスコアが低い傾向がある」と、同社のESG・気候調査担当マネジングディレクター、メギン・スウィング・イーストマン氏が電子メールでコメントした。

  ただ同氏は全ての新興国市場を同一視しないよう注意も促し、「差異が見られる」と述べた。

  モーニングスター傘下のESG格付け会社サステナリティクスの広報担当者は、同社の調査チームが「セクター別に構成されており、重要なESGリスクを企業間で比較できる」とコメント。同社は「先進国企業と比較した新興国市場の企業の評価について、最近調査を実施」していないという。

  ブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーも、ESGスコアを提供している。

企業統治の問題は特に重要

  投資会社J・スターンのパートナー、カトリーナ・コスモポウロウ氏は、新興国市場の企業が「ESGの実践と情報開示という観点で、先進国の同業他社と比較して多くの場合、数歩遅れている」と指摘。企業統治に関連した問題は「新興国市場で特に重要だ」という。

  ロシアのウクライナ侵攻が契機となりESG投資を見直す動きが広がったことを受け、ESG投資家は2022年の大半の期間、新興国市場に対して慎重な姿勢を示してきた。

  新興国市場でクライメート・トランジション関連の資産を物色するファンドマネジャーは、気が付けば、企業価値を損ないかねない社会・企業統治の問題にさらされていた。ESGスコアを介しても、そうした問題は手遅れになるまで検出されない場合が多かった。

  新興国市場に関連するリスクからポートフォリオを守るため、独自のツールを開発する投資家もいる。オランダの運用会社ファンランスホット・ケンペンは今年初め、国の「汚職」のスコアなどを表示する評価基準を作ったことを明らかにした。これは中国の資産を含むブラックリストとなった。 

リソースを持った投資家に魅力

  新興国市場では「環境の側面よりも、トランジションについての社会的な側面を理解することの方が、実際には重要である。貧困削減や発展する権利は通常、最も優先度が高いためだ」と、国連の責任投資原則(PRI)の最高責任投資責任者、ネイサン・ファビアン氏はインタビューで指摘する。

  この点は、より深く掘り下げられるだけのリソースを持った投資家にとっては魅力的に映る。

  新興国市場では先進国と比較してデータ開示が「総じてかなり不足している。特にこれは環境・社会に関連した一部の微妙な問題に言えることだ」と語るのは、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)のマネジングディレクターでファンダメンタル・エクイティー・顧客ポートフォリオ管理グローバル責任者のルーク・バーズ氏だ。

  だからこそ市場全体に勝つ方法を見いだすことができ、それが「超過リターン獲得の機会」だと同氏は指摘した。

  ESGスコアの制度は依然として「非常に問題がある」と、ワシントンの投資会社カルティカ・マネジメントの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のテレサ・バーガー氏は指摘。しかし、やる気のある投資家にとって「新興国市場には多くの投資機会がある」という。

  またESG投資家から資金を得る企業は「資本コストを下げ、企業価値を高める」ことができるとも同氏は述べた。

原題:Fund Managers Find Alpha in ‘Artificially Low’ ESG Scores (1)(抜粋)

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