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日銀3月会合でサプライズ見込まず、地銀の含み損拡大に懸念の声

更新日時
  • 市場は長期金利のフェアバリューを1%程度と想定-野村証松沢氏
  • 長期金利1%に上昇で地銀の含み損2兆円に拡大も-ピクテ大槻氏
A Japanese national flag flies outside the Bank of Japan headquarters in Tokyo.

A Japanese national flag flies outside the Bank of Japan headquarters in Tokyo.

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

日本銀行が3月に開く金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の再修正など何らかのサプライズは果たしてあるのか。市場関係者の多くは年度末を控えたタイミングでもあり、金利上昇(債券価格は下落)を通じて金融機関の含み損を拡大させるような政策変更の可能性は低いとみている。

Speakers at Japan's Business Lobby "Keidanren" Council
4月8日に任期満了となる黒田総裁
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ブルームバーグが2月17日に公表したエコノミストを対象にした事前調査によると、3月の政策修正を予想する向きは5%程度にとどまるが、昨年12月の会合では突如修正に動いただけに再度のサプライズに対する警戒感は根強い。

  野村証券の松沢中チーフストラテジストは「海外勢を中心に政策修正の可能性について問い合わせが多く、肌感覚では5%よりもっと高い確率で相場に反映されている可能性がある」とみる。

  日銀が3月に長期金利の許容上限を修正するなら、「多くの市場参加者がフェアバリューを1%付近と考えていることを考慮せざるを得ない」と松沢氏は指摘。昨年12月のように0.25%刻みで上限を上げると、市場は一段の引き上げを求め投機的な売りを続ける可能性が高く、「上限を一気に1%まで上げるか、目標自体の撤廃を選択せざるを得ない」と話す。

長期金利の推移
 
 

  仮に許容上限が大きく引き上げられた場合、最大の懸念材料は金融機関が抱える国債の含み損拡大だ。ピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローによると、昨年9月末時点で約6300億円だった地方銀行の含み損は年末には約1兆4000億円へ拡大。長期金利が1%まで上昇すれば1兆7000億-2兆円まで膨らむ可能性がある。

  長期金利の上昇は、中長期的には貸出金利の利ざや拡大を通じて銀行の収益にプラスの影響を及ぼす。大槻氏の試算では長期金利が1%に上昇し、恩恵が完全に反映された場合、業務純益の増益率は全国銀行平均で33%、都市銀行は22%、地銀は49%となる。

  大手行の増益率が低いのは海外資産の割合が多く、手数料比率も高いためだ。一方、地銀は国内基準を採用し、国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制をクリアする上で含み損を考慮する必要もないため、享受するメリットは相対的に大きいという。

昨年12月の日銀会合以降のメガバンクと大手地銀の株価推移
 
 

  しかし、3月期末前となると話は別だと大槻氏は語る。含み損の拡大がメディアなどで取り上げられやすく、「3月末時点の財務諸表が当面のリスクテイク能力に影響を与え、貸し出しなどに影響を及ぼす可能性もある」ため、期末直前のYCC修正は「非常に考えにくい」とみている。

  地銀マネーの運用や投資助言を行うオールニッポン・アセットマネジメントの永野竜樹社長も同様の見解だ。期末前だと金利上昇に対する準備不足の金融機関も多く、混乱を招きかねないと指摘。債券の含み損が拡大しても保有株式の含み益で吸収可能な銀行も多く、地銀全体では持ちこたえられるが、「サプライズは避けた方が良いし、ないと思う」と話す。

  一方、経済学者の植田和男氏が国会承認を経て次期日銀総裁に就任した場合、新体制が異次元緩和の出口戦略を進めやすくするため、黒田東彦総裁が最後の会合で緩和縮小にかじを切るのではないかとの見方もある。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、金融政策の判断はその時点の情報や見通しを基に行われ、現在の政策委員が次の総裁の意向を推察して進めるものではないと説明。必要な見直しは「植田氏の下で行われるだろう」と予想した。

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(文末に市場関係者のコメントを追加し、記事を更新します)
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